「私は、本当は何がしたいんだろう?」
30歳を過ぎてから、何度も考えてきた問いです。
やりたいことが、まったくないわけではありません。
歌を歌うのが好きで、頭の中で物語を考えるのも好き。自然について知りたい。ものづくりもしてみたい。
思いつくことはたくさんあるのに、「これが私の進む道だ」というのはまだわからず、日々手探りの状態です。
やりたいことリストやビジョンボードを作っても、眺めているうちに「本当にこれでいいのかな」という違和感が出てきます。
そこで今回、ChatGPTと長く対話しながら、自分が望む暮らしや、心が動く瞬間を一つずつ掘り下げました。
その結果、私が探していたのは、大きく掲げた将来の夢や、具体的な職業ではなかったのだと気づきました。
私が本当にやりたいのは、さまざまなことを実際に試しながら、自分が何を好きな人なのかを知っていくことだったのです。
この記事では、その答えにたどり着くまでに見えてきたことを、順番に整理します。
「好き」を3つに分けて記録すると、自分の選び方が見えてくる
AIとの対話を通じて気づいたことを最初にお話しします。
私の場合は、好きという感覚を次の3つに分けると、理由が見えやすくなるということ。
形、色、音、重さ、手触りなど、目の前にあるものの何が好きか。
対象そのもの
それを使って何をする時間が好きなのか。どんな感覚になるのか。
そこから生まれる体験
誰が、どこで、どのように作ったのか。自分のどんな記憶と結びついているのか。
意味や物語
この3つです。
例えば、コップが好きだとします。
物としては、形や釉薬の色、手に持った重さが好きなのかもしれません。
体験としては、そのコップで夜にゆっくり飲む時間が好きなのかもしれません。
さらに、旅先で出会ったことや、作り手の物語に惹かれている可能性もあります。
山の景色でも同じです。
山の形そのものが好きなのか。
その景色の中で季節の変化を感じることが好きなのか。
自分の記憶や「帰る場所」の感覚と結びついているのか。
ここまで分けて記録できれば、自分が選ぶものに共通する軸が少しずつ見えてきます。
私はこれから、何となく好きなもの選ぶ人ではなく、「私はこう感じるから、これを選んだ」と自分の言葉で説明できる人、自分をデザインできる人になりたいんです。
ChatGPTは答えを出してくれるものではなく、仮説を返す壁打ち相手
私がAIと対話をするときに、AIにお願いしていることがあります。それは、
「私が自分の納得いく答えを得られるまで、勝手にまとめたり解釈しないこと」
AIに記憶してもらっていて、対話するときに不要な解釈が入らないようにしています。
こうすることで、AIの返す言葉に惑わされずに自分が考えていることを整理しやすくなるんです。
今回のAIとの対話で特に役に立ったのは、この前提で話を進めてくれたことでした。
私は会話をしながら自分の考えを整理するタイプの人間なので、とにかく頭に浮かんだことを吐き出していって整理するのが性に合っているんです。
そして今回の対話でも、往復を続けるうちに、一人で考えていたときには別々に見えていた出来事がつながりました。
過去にあった出来事
編み物に集中できたこと。
歌いたいのに動けなかったこと。
道具や知識を先に揃えたくなること。
ビジョンボードに違和感があったこと。
それらはすべて、「私はどんな条件なら、自分の好奇心を安心して試せるのか」を考えるヒントになりました。
AIは私にとって最高の知恵を授けてくれるわけじゃありません。
だからこそ、答えを採用するのではなく、返ってきた仮説に自分がどう反応したかを見ることが大切でした。
AIとの対話で知りたかったのは、AIの答えではなく、自分自身の反応だったのです。
やりたいことが決まらなかったのは、未来を先に決めようとしていたから
私がやりたいことを決められなかった一番の理由は、経験する前に「こうなりたい未来」を選ぼうとしていたからでした。
まず、私の理想の暮らしを考えると、自然の近くにある広い家や庭があること。毎日鳥のさえずりで目が覚めること、など、今の生活とはかなりかけ離れた憧れがあります。
歌や楽器を気兼ねなく楽しめる場所も欲しいし、季節の手仕事ができる台所や、道具を広げられる空間にも憧れます。
理想を具体的にするほど、今の住まいや生活とのギャップが目についてしまい、毎日の生活がどんどん楽しくない生活のように感じてしまっていたのです。
「今は場所がない」
「音を出せない」
「そんな暮らしを本当に実現できるのか」
ワクワクするような未来を考えていたはずなのに、いつの間にか、できない理由を数えることが多くなっていました。
AIとの対話で見えたのは、「何をするか」より先に必要な条件だった
ChatGPTとの対話で最初にはっきりしたのは、私が動けない原因は、やりたいことがないからではないということでした。
私には、興味を持ったことへ集中するための条件が必要だったのです。
欲しかったのは、暇な時間ではなく「介入されない時間」だった
AIとの対話の中で、私が最も集中できるのは、誰にも見られず、途中で話しかけられず、何をしているか説明しなくてよい時間なのだということがわかりました。
私は以前、結婚を期に仕事を辞めた期間があり、その時は夫が外出している時間に編み物や歌の録音をしていた時期がありました。
時間は限られていましたが、「この時間は全部、自分の好きに使っていい」と思えました。
その安心があったからこそ、ゴミ拾い、編み物、歌、動画投稿、ハンドメイドと、興味が自然に広がっていったのだと思います。
反対に、何時間あっても、途中で誰かが入ってくるかもしれない、何をしているか評価されるかもしれないと思うと、集中する前にワクワクする心が止まってしまう感覚があります。
つまり私に必要なのは、単なる自由時間ではなくて、短くても、誰にも介入されないことが保証された時間と空間だったんです。
これは、これから住まいや働き方を考えるときにも、外せない大事な条件だと気づきました。
即行動派だけど、準備はしておきたいタイプ
もう一つ必要なのは、始めたいと思ったときに動ける準備です。
歌を録音するなら、必要な機材は何か。
服を探すなら、自分が好きな形や柄を把握しておきたい。
必要なものが分からない状態は、私にとってものすごくストレス。
最低限でいいから、一度始めたら終わるまでノンストップで進められる準備をしておきたい。
自分の力を試す前に、環境不足や知識不足で中断するのがすごく嫌なのだと思います。
物だけでなく、言葉や基礎知識も、私が安心して始めるための道具になります。
AIと対話するのが得意になった今では、知識に関しては昔よりもはるかに、準備にかかる時間が短くなりそうだなという希望を感じています。
分からない言葉を調べたり、必要な道具を整理したり、最初の一歩を小さく分けたりすることで、「興味はあるけれど始められない」状態を減らせそう。
やりたいと思って、これまでは進められていなかったことを棚卸した時、「準備不足」が原因になっているものは、今からでも始められるかもしれないなと感じました。
私が求めていた、夢を決める方法ではなく「実験する方法」だった
ここまでの話をつなげると、私に合う進み方が見えてきました。
私は、一つの夢を決めて一直線に進むより、興味があるものを観察し、そのときの自分の経験や反応から、好きかどうかを判断する方が性に合っています。
流れにすると、こんなかんじ。
- 面白そうだと感じる
- 必要な道具・知識・場所を整える
- 一回気が済むまでとことん取り組んでみる
- 自分が何を感じたか記録する
- 続けるか、手放すか、別の形にするかを決める
この方法なら、途中で興味が変わっても全てが自分の糧になります。
実際にやってみて「思っていたほど好きではなかった」と分かることも、自分を知るための大切な情報です。
反対に、何年経っても戻りたくなるものがあれば、それは私にとって重要な活動なのかもしれません。
ものづくりをしていた時にも、同じ違いがありました。
鍵編みがどういうものなのかが気になって100均の糸を使ってバッグを編んだときは、一度完成したものにはほとんど興味が湧かず、全て身近な人にあげてしまいました。
一方で、自分に必要だからと麦わら帽子を編んだときは、完成したものを実際に使おうと思えたのです。
私は「ものづくりをすること」そのものより、自分が欲しいものを理解し、それを形にすることに惹かれているのだと分かりました。
経験してみることで初めて、同じ「好き」の中にある違いを見つけられたのです。
これから、自分を知るための12個のやりたいこと
今回の対話では、「もし場所やお金を気にせず試せるなら、何をしてみたいか」を考えました。
出てきたのは、次の12個です。
- 楽器を思い切り演奏し、新しい楽器も試す
- 誰にも気兼ねせず、歌や音楽制作をする
- 身近な自然の疑問を調べ、発見ノートを作る
- 自信を持って作れる得意料理を5つ作る
- 自分が好きな服の形・色・素材を研究する
- 自分に必要な住環境を調べる
- 日々の「好き・ときめく・ワクワクする」を記録する
- 好きな音楽のジャンル・年代・背景を深掘りする
- 好きな植物を調べ、実際に育てる
- 好きな鳥や昆虫について、惹かれる理由を考える
- 生活の中で本当に使いたいものを自分で作る
- 心を動かされた本・絵・工芸品などの作品データベースを作る
一見すると、音楽、自然、料理、服、住まいと、ばらばらです。
けれど、共通していることがあります。
どれも、何かを達成して肩書きを得るためではなく、「私は何に心が動く人なのか」を知るための行動なのです。
だから、この12個は「必ず達成する目標」ではありません。
今の私が気になっている方向を確かめる、12の探索テーマです。
入れ替わってもいいし、試して終わってもいい。
大切なのは、リストを守ることではなく、経験したときの自分の反応を見逃さないことだと思っています。
今は、未来を決めるより、自分についての仮説を更新したい
今回たどり着いた結論は、「この仕事をする」「この場所に住む」新たな目標ではありませんでした。
今の私が大切にしたいのは、次の3つです。
- 誰にも介入されず、好奇心を試せる時間と空間を持つ
- 興味を実際に経験し、自分の反応を記録する
- 経験から分かったことに合わせて、選択を更新する
経験が増えれば、好きなものや住みたい場所が変わるかもしれません。
以前は、それを「自分には軸がない」と感じていました。
でも今は、経験が増えたことで、自分についての仮説が更新されたと考えられます。
もしかすると私にとっての「30からのRe:Start」は、一つの理想へ一直線に進むことではなくて、何度でも試し、何度でも自分を知り、その時々の自分に合うものを選び直していくことなのかもしれない。
まずは毎日の中に、「役に立つから」ではなく、「私がちょっと気になったから」という理由だけで動く時間を作ってみたいです。
その小さな実験の先で、「これをしている私が好きだ」と思えるものに出会えたらいい。
今はまだ、答えを出し切らずに、その変化を見ていきたいと思っています。

