3児の親でありノンバイナリー(Xジェンダー)。
30歳から「自分らしい生き方」を探求中のユウです。
30歳を過ぎてから 「本当に自分らしい生き方って何だろう?」と問い直すようになり、
その答えのひとつとして出会ったのが 「ノンバイナリー」という言葉でした。
この記事では、 「ノンバイナリーとは何か」を知りたい人のために、
できるだけわかりやすく、 そして私自身の経験も交えながら丁寧にお伝えしていきます。
・自分の性別にしっくりこない
・「男」「女」のどちらにも違和感がある
・ノンバイナリーという言葉を見かけて気になっている
そんな思いを抱えているかたも、 ぜひ読んでみてください。
ノンバイナリーとは?
ノンバイナリー(non-binary)とは、
性自認が「男性」「女性」という枠にあてはまらない人を指す言葉です。
性別を「男か女か」の二択で考える価値観を「ジェンダーバイナリー(二元論)」と言いますが、
ノンバイナリーはその枠の外にある多様なあり方を尊重する概念です。
たとえば、
「自分は男性でも女性でもない」
「そもそも性別というものを意識していない」
「一つの性別でくくられることに違和感がある」
など、その感覚は人によってさまざまです。
※関連記事⇨ ノンバイナリーと気づいた瞬間。“名前がつく”という救い
この記事では、私自身の体験を交えながら、
ノンバイナリーという言葉の意味や、関連するアイデンティティ、
代名詞のこと、Xジェンダーとの違いについてもわかりやすく解説していきます。
ノンバイナリーの種類と広がり
ノンバイナリーは単一の性自認ではなく、
幅広いアイデンティティを含む総称です。
そのため「ノンバイナリー」と一括りにしても、
その中にはさまざまな感じ方・あり方が存在します。
ノンバイナリーの中にある感じ方:
- アジェンダー(Agender):性別という概念自体を感じない
- バイジェンダー(Bigender):2つの性を同時に、あるいは交互に感じる
- ジェンダーフルイド(Genderfluid):時間や状況で性自認が変わる
- デミジェンダー(Demigender):「なんとなく近い」性を感じるが断定しない
これらの感覚は外見では判断できず、本人の内面に根ざしています。
誰かがどんな見た目をしていても、「その人が自分をどう感じているか」が一番大切なのです。
ノンバイナリーの代名詞と国ごとの言葉の違い
ノンバイナリーの人は、英語では「they/them」を使うことが多く、これは2019年にMerriam-Webster辞書にも正式に登録されました。
代名詞は、その人の尊厳に関わる大切な要素です。以下のような中性代名詞が使われることもあります:
- xe/xem/xyr
- ze/hir/hirs
また、国によって独自の代名詞も発展しています。
- スウェーデン:「hen」
- フィンランド:「hän」
- フランス:「iel」(若年層を中心に広がり中)
日本語では中性の代名詞が確立されておらず、「わたし」「ボク」「オレ」なども性別を連想させやすいため、ノンバイナリー当事者が悩みを感じやすいポイントになっています。
しかし最近では、日本でも彼、彼女の代わりに「彼人(かのと、かのひと)」や
おねえさん、お兄さんの間の「おぬうさん」など、
新たな言葉も生まれているようです。
Xジェンダーとの違いとは?
日本では「ノンバイナリー」に似た概念として「Xジェンダー」という言葉もあります。
観点 | ノンバイナリー | Xジェンダー |
---|---|---|
起源 | 英語圏(グローバル) | 日本発祥 |
分類 | 分類しない自由を重視 | 中性・両性・無性・不定性などに分かれる |
対象 | 性自認と性表現を含む | 性自認中心 |
ノンバイナリーは「あり方全体」、Xジェンダーは「自分の性別の感覚」に注目している、という違いがあります。
世界と日本で進む認知と制度の変化
アメリカ、カナダ、ドイツ、ニュージーランドなどでは、
パスポートに「X」性を記載できる制度が始まっています。
これは国レベルで「男/女以外の性」を認める動きと言えます。
また、大手の辞書や政府機関、メディアでも中性代名詞の使用が拡がり、「性別=2択ではない」という考え方が主流になりつつあります。
一方で日本では、法的な性別欄に第三の選択肢はまだなく、公的書類や制度面では課題が残っています。
それでも、ジェンダーレス制服の導入や、性別欄を求めない履歴書を採用する企業の増加など、社会の空気は少しずつ変わってきています。
ノンバイナリーの特徴と体験談
私は生物学的には女性として生まれ育ちましたが、
幼いころからずっと「女の子らしさ」にモヤモヤを抱えてきました。
制服のスカートが嫌だったり、
「女の子なんだから〇〇しなさい」と言われると居心地が悪くなったり。
かといって、男の子になりたいわけでもない。
「自分が何者か」を説明できる言葉が見つからず、
長年その違和感を抱えたまま過ごしていました。
そんな私がノンバイナリーという言葉に出会ったのは、
双子の授乳を終えたタイミングでした。
「もう女性の体が必要なくなった。女性として生きることにも違和感がある。」
そう気づいたとき、調べて出てきたのが“ノンバイナリー”という概念だったのです。
初めて自分の感覚に名前がついたこと。
それは、大きな安心と自信につながりました。
今までのモヤモヤや葛藤が、「私だけじゃなかったんだ」と知ることができたのです。
ノンバイナリーの認知度と人口
近年、ノンバイナリーという言葉やその概念に対する認知は、少しずつ広まりつつあります。
アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)による調査では、LGBTQ+に該当する成人のうち、約11%がノンバイナリーに該当すると報告されています。人数に換算するとおよそ120万人にも及び、決して少数とは言えない存在です。
また、Ipsos社が2023年に行った国際調査によると、世界27か国の平均で、全体の約1%がノンバイナリーやトランスジェンダー、または流動的な性自認を持っているとされています。このデータは、国や文化によって表現方法や受け入れられ方に差があるとはいえ、ノンバイナリーという存在が確かに“世界共通のリアリティ”として広がってきていることを示しています。
出典: https://transequality.org/issues/resources/understanding-nonbinary-people-how-to-be-respectful-and-supportive
Ipsos Global Advisor | LGBT+ Pride 2023
ノンバイナリーと関連する他の言葉たち
ノンバイナリーという言葉を知ったとき、
「他にも似たような言葉があるけど、
何がどう違うの?」と感じたことはありませんか?
ここでは、
ノンバイナリーと並んで使われることの多い
関連用語を簡単に紹介します。
クィア(Queer)
もともとは侮蔑語として使われていた言葉ですが、現在では「性的指向や性自認において、既存の枠に収まらないあり方全般」を示す肯定的な言葉として使われています。
ノンバイナリーもクィアに含まれることがあります。
ジェンダーレス(Genderless)
性別にとらわれない考え方や表現スタイルを指します。ファッションやライフスタイルの文脈でもよく使われ、性自認というよりは「見せ方」のニュアンスが強い言葉です。
クエスチョニング(Questioning)
自分の性自認や性的指向についてまだ探っている段階のこと。
「何者かはまだわからない、でも探している」という状態にいる人を指します。
ノンバイナリーという言葉がくれたもの

私にとって、「ノンバイナリー」という言葉に出会えたことは、自分自身を認める大きなきっかけでした。
「女性じゃない。でも男性でもない。けど、私という存在は確かにここにいる。」
その実感が持てたことが、今の暮らしを支えてくれています。
あなたも、もし自分の性別に違和感があるなら、無理に答えを出さなくても大丈夫です。
モヤモヤしてもいい。言葉を探してもいい。
大切なのは、自分の感覚に耳をすませること。
あなたは、あなたのままでいい。