3児の親であり、
Xジェンダーとして「自分らしさ」を探求しながら発信しているユウです。
私は、夫から「ママ」や「お母さん」と呼ばれることに、違和感を覚えています。
自分が呼ばれていることに気付けないことも。
そこで夫にお願いして、名前で呼んでもらうことにしました。
子どもに「ママ」や「マミー」と呼ばれるのは、
なんとも思わないんですけどね。
たとえ周囲には伝わりづらくても、
“どう呼ばれるか”は、私にとって自分を構成する大切な要素なんです。
そしてこれは、
ノンバイナリーやXジェンダーといった非二元的な性自認をもつ人たちにとっても、
共通する悩みではないでしょうか。


この記事では、「they/them」のような英語のジェンダー・プロナウン(性別にとらわれない代名詞)の背景を紹介しながら、日本語における呼ばれ方の選択肢や、代わりになる表現をまとめました。
「彼」でも「彼女」でもない、
しっくりくる呼ばれ方を探している方に、届きますように。
ノンバイナリー・Xジェンダーの呼び方に悩んだら? 性別を限定しない表現の重要性
ノンバイナリーやXジェンダーの人が、自分のことをどう呼ばれるか。
この「代名詞の問題」は、外からは見えにくいけれど、当事者にとってとても重要なテーマです。
特に日本語では、「彼」「彼女」「お兄さん」「お姉さん」といった性別を前提とした呼び方が大半で、
「しっくりくる言い方が見つからない」
「どれも違和感がある」
と悩む方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
かくいう私も、なんと呼んでもらいたいかで悩んだ経験があります。
they/themとは? 英語でノンバイナリーが使うジェンダー中立の代名詞とその背景
英語圏では、ノンバイナリーやXジェンダーの人たちが「he」や「she」以外の選択肢として、
they/themというジェンダー中立の代名詞を使うようになりました。
これは文法的には元々「複数形」ですが、
近年では単数theyとしても正式に認められています。
たとえば、Merriam-Webster辞書やThe Associated Press Stylebookなどにも掲載されています。
they/themは、「性別を限定されたくない」「どちらにも当てはまらない」人が自分の存在を尊重するための選択肢として広く使われており、国際的な場でも定着しつつあります。
日本語ではthey/themに完全に相当する中立的な代名詞は定着していませんが、Xジェンダーやノンバイナリーの呼び方、そして新しいジェンダー表現を模索する動きが広がっています。
1日の中で呼んで欲しい代名詞が変わる、Rolling Pronounsと呼ばれます。
詳細は、こちらの記事に書いています。

日本語にthey/themのような中立的代名詞はある? ノンバイナリーの呼び方と代替表現
残念ながら、日本語にはthey/themに相当する性別を示さない三人称代名詞が定着していません。
「彼」「彼女」のように、見た目や声で性別を前提にされてしまう呼び方が多く、
ジェンダーに揺らぎを感じる人たちにとっては、日常会話の中でもミスジェンダリングの不安がつきまといます。
※ミスジェンダリングとは、本人が望んでいない性別や代名詞で呼んだり扱ったりすることを指します。
そのため、ノンバイナリー/Xジェンダー当事者の中には、以下のような工夫をしている人もいます。
ジェンダー表現にとらわれない呼び方の工夫。日本語でできるノンバイナリー向け呼び方例
日本語では、they/themのような代名詞がなくても、ジェンダー表現にとらわれない呼び方の工夫によって、
自分らしさを表現することができます。
名前 or 名前+さん
もっとも多く使われているパターン。
性別を限定せず、敬意も込められる表現。
ニックネームや役職名
たとえば「リーダー」「せんせい」「部長」など、
役割に基づいた呼び方もありますね。
これはジェンダーを感じさせにくく、職場やグループでも自然に使えます。
体験談:私は名前呼びに変えてもらいました
私は現在、夫や実家家族には「ユウ」と呼んでもらうようお願いしています。
でも、お願いしたのは一回だけで、その後なんと呼ぶかは本人の意思にお任せしていますが、
名前呼びを積極的に使ってくれているように感じます。
私の意思を尊重してくれていることがわかっているので、
もし、女性らしい代名詞を使って呼ばれることがあっても、以前ほどは気にならなくなりました。
呼び方をあえて選ばないという選択肢 ジェンダー表現を固定しない生き方
どんな呼び方もしっくりこないとき、あえて「特定の代名詞を使わない」「名前だけで呼んでほしい」と伝えることも、自分を守る方法のひとつです。
これは「ジェンダー表現を固定されたくない」「自分のあり方を縛られたくない」という思いや、そのときどきで変化する感覚(ジェンダーフルイド)を尊重するスタンスともいえます。
アイデンティティ疲れ(Identity Burnout)とは? 呼び方や性別説明に疲れたときの対処
何度も性別を訂正したり、「なんて呼べばいいの?」と尋ねられ続けたりすると、
説明そのものに疲れてしまう人もいます。
これは「アイデンティティ疲れ(Identity Burnout)」とも呼ばれ、
特にカミングアウトを繰り返す立場の人たちに多い悩みです。

日本で広がるノンバイナリー・Xジェンダーの呼ばれ方とジェンダー表現 海外との違いも解説
海外のthey/themのように、日本でも「自分で呼ばれ方を決める」という動きが少しずつ広がっています。
SNSやノンバイナリー/Xジェンダー当事者の間では、自分自身のジェンダー表現や呼ばれ方を模索しながら、次のようなユニークな言葉が提案されています。
まだ定着しているわけではありませんが、日本の中でも独自の代名詞を生み出そうとしている人たちがいるのです。
おぬうさんとは? ノンバイナリー向けの新しい呼び方の由来と事例
あるとき「“おねえさん”でも“おにいさん”でもないなら、私は“おぬうさん”じゃん!」と、
新たな言葉を生み出した気持ちになって、感動したことがありました。
後日、「CALL ME おぬうさん」と書かれたTシャツが販売されているのを知って、
「同じ感覚の人がいたー!」と感動したのを覚えています。
このTシャツは、クリエイター・O-mochi(@O-mochi9)さんがSUZURIで販売しているものです。
CALL ME おぬうさん(SUZURI商品ページ): https://suzuri.jp/O-mochi9/digital_products/76593
そこには「見た目で性別を決めず、プロナウンを確認してね」というメッセージが込められていました。
彼人(かのと/かのひと)とは? 日本語で使える中立的代名詞の一例
彼人(かのと・かのひと)という言葉も、コミュニティーの中で提案されている言葉なんだとか。
個人的には、小説の中に登場しそうなかっこいい代名詞だなと思いました。
ノンバイナリーが使う一人称の悩み
「ぼく」「わたし」「おれ」などの一人称も性別に結びつくことが多く、
どう自称するかもノンバイナリーの人にとっては大きな課題です。
あえて一人称を使わない、あるいは複数を使い分ける人もいます。
私も、自分のセクシュアリティに気がついてから、「俺デー」を作ってみたり、

ラジオでは一人称を「僕」にして発信してみたり、
日常生活で「わし」と言ってみたり、色々な一人称を試しています。
ブログのように丁寧に説明する場や、普段対面でお話しするときには
「私」を使っています。
Q&A
Q1. ノンバイナリーやXジェンダーとは何ですか?
A. ノンバイナリーやXジェンダーは、性自認が男性・女性のどちらにも完全には当てはまらない人を指す言葉です。性別が流動的な人や、どちらにも属さないと感じる人も含まれます。


Q2. ミスジェンダリングとは何ですか?
A. 本人が望んでいない性別や代名詞で呼んだり扱ったりすることです。意図的でなくても、繰り返されると心理的な負担や疎外感につながります。
Q3. 日本語にthey/themのような中立的な代名詞はありますか?
A. 現時点では、定着した中立的な代名詞はありません。代わりに、名前+さん、役職名、ニックネームなど、性別を前提としない呼び方を工夫する人もいます。
Q4. Xジェンダーやノンバイナリーの人は、どう呼べば良いですか?
A. もっとも確実なのは本人に希望を確認することです。そうでない場合は、名前+さんやニックネームなど、ジェンダーを限定しない呼び方を選ぶと安心です。
Q5. 新しく提案されている日本語の代名詞はありますか?
A. 「彼人(かのと/かのひと)」「おぬうさん」「おたあさん」など、一部のコミュニティやSNSで使われ始めた言葉がありますが、まだ広くは定着していません。
呼び方を選べる自由 ノンバイナリー・Xジェンダーにとっての安心と尊重
呼ばれ方は、単なる言葉以上に、
その人の存在や尊厳をどう扱うかというテーマとつながっています。
たとえ一般的ではなくても、自分が「この言葉で呼ばれたい」と思える選択肢があることは、
自己肯定感や安心感につながる大きな力になります。
誰かが提案した言葉が、 あるいはあなた自身が選んだ新しい言葉が、
「わたしらしさ」を表現できる手段になりますように。
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