3児の親でありXジェンダー。
30歳から「自分らしい生き方」を探求中のユウです。
「パンセクシャル」という言葉を初めて見たとき、
「あ、自分の感覚に少し近いかも」と思いました。
恋愛や性的な関心を持つ対象が「男女どちらか」ではない、
という感覚。
だけど、誰とでも付き合ったことがあるわけじゃないし、
自分が本当にそうなのかはよくわからない。
この記事では、
バイセクシュアル・ポリセクシュアル・アセクシュアルとの違いや、
私自身がセクシュアリティ診断でこの結果を受け取ったときの
リアルな気持ちも交えて「パンセクシャルとは何か?」についてお話ししていきます。
パンセクシャルとは?
パンセクシャルの基本的な定義
パンセクシャル(pansexual)とは、
相手の性別に関係なく、恋愛的または性的な魅力を感じる指向のことです。
「pan」はギリシャ語で「すべて」を意味し、
性別が“男性”“女性”だけではなく、
ノンバイナリーやXジェンダーなど多様な性のあり方を含む
すべての性のスペクトラムに開かれているという考え方が前提になります。
参考:
GLAAD(アメリカのLGBTQ+メディア擁護団体)では、パンセクシュアルを「性別にかかわらず、人に恋愛的あるいは性的に惹かれる人」と定義しています。
出典:GLAAD Glossary of Terms(What is Pansexuality?)
パンセクシャルは誰でもなりうる?
パンセクシャルは“誰に魅力を感じるか”という感覚の傾向です。
好きになった人がたまたまその性別だった。
そんな感覚だと思います。
このため、「私はパンセクシャルです」と名乗る人もいれば、
「誰でも好きになる可能性があるけど、
あえてラベルはつけていない」という人もいます。
パンセクシャルという言葉は、
自分の感覚を説明する“ヒント”として使うもの。
言葉にとらわれる必要はありませんが、
「自分もそうかも」と感じたときに、
選択肢のひとつとして知っておくと安心につながることがあります。
パンセクシャルと名乗る人たちの“感覚”とは?
実際にこの言葉を使っている人たちの話から、
パンセクシャルの感覚を知るヒントを得てみましょう。
たとえば、歌手で俳優のジャネル・モネイさんはこんなふうに語っています。
「私はパンセクシュアルだと気づいたの。愛は、境界のないものだから。」
— Janelle Monáe(出典:GLAAD公式記事)
最初はバイセクシュアルだと思っていたけれど、
「性別の境界そのものがない感覚」をもっと正確に表現できる言葉として、
パンセクシャルを選んだそうです。
また、マイリー・サイラスさんも自分のセクシュアリティについてこう語っています。
「私は人を“性別”ではなく“人間”として見る。」
— Miley Cyrus(出典:GLAAD公式記事)
性別で判断するのではなく、
その人の内面や関係性の中で自然に惹かれていく感覚。
この言葉を使っている人たちの話を聞いてみると、
「性別ではなく“人”に惹かれる」という、
感覚に基づくものであることがわかります。
パンセクシュアルと同様に複数の性別を好きになる可能性がある「マルチセクシュアル」のなかま
マルチセクシュアル(Multisexual)は、
複数の性別に恋愛的・または性的に惹かれる指向の総称です。
- バイセクシュアル
- ポリセクシュアル
- パンセクシュアル
これらはいずれも
「好きになる性別が1つに限定されない」という点で共通しており、
モノセクシュアルと対をなす概念として位置づけられています。
パンセクシュアル、バイセクシュアル、ポリセクシュアルの違い
「パンセクシュアル」と聞いて、
「それってバイセクシュアルとどう違うの?」と思う人も多いのではないでしょうか?
このセクションでは、よく混同されやすい2つの指向、
バイセクシュアル・ポリセクシュアルとパンセクシュアルの違いを、
わかりやすく解説します。
バイセクシュアルとの違い
バイセクシュアル(Bisexual)は、
「2つ以上の性に惹かれる指向」です。
従来は「男性と女性の両方に惹かれる」と理解されてきましたが、
現在は「性別にかかわらず複数の性に惹かれる」という意味で使う人も増えています。
一方でパンセクシュアル(Pansexual)は、
「すべての性別に関係なく惹かれる」というスタンス。
つまり、「性別が関係ない(not dependent)」という点がパンセクの特徴です。
「バイセクシュアルとパンセクシュアルはほぼ同じ」と感じる人もいます。
違いはラベルの使い方や感覚の違いであり、
明確に線を引けるものではありません。
ポリセクシュアルとの違い
ポリセクシュアル(Polysexual)は、
「複数の性別に惹かれるが、すべてではない」という指向です。
たとえば、「女性とノンバイナリーの人には惹かれるけれど、男性には惹かれない」
といったような感覚です。
パンセクシュアルは「どの性別でも可能性がある」のに対し、
ポリセクシュアルは「惹かれる性別に一定の範囲がある」という違いがあります。
一つの性別にのみ恋愛的・または性的に惹かれる「モノセクシュアル」のなかま
モノセクシュアル(Monosexual)とは、
特定の1つの性別に対してのみ恋愛感情や性的魅力を感じる指向のことです。
これは、バイセクシュアルやパンセクシュアルなど
「複数の性別に惹かれる指向(マルチセクシュアル)」とは対照的な概念です。
モノセクシュアルに分類される代表的な指向には、以下の2つがあります。
ヘテロセクシュアル(Heterosexual/異性愛)
自分とは異なる性別の相手に恋愛的・性的に惹かれる指向です。
- 女性が男性を好きになる/男性が女性を好きになる
社会的にもっとも一般的とされてきた恋愛スタイルであり、
多くの文化や制度がこの前提でつくられています。
そのため、他の指向と比べて可視化されにくいという側面もあります。
ホモセクシュアル(Homosexual/同性愛)
自分と同じ性別の相手に恋愛的・性的に惹かれる指向です。
- 男性同士で惹かれ合う場合:ゲイ(Gay)
- 女性同士で惹かれ合う場合:レズビアン(Lesbian)
ホモセクシュアルもモノセクシュアルの一種であり、
「自分にとって惹かれる性別がはっきり一つだけ」という点で共通しています。
アセクシュアルとの違い |「そもそも惹かれない」という選択肢もある
アセクシュアル(Asexual)は、
他者に対して性的な欲求や魅力をあまり、
またはまったく感じない指向です。
恋愛感情はあっても、性的な関心はない場合もあり、
「ロマンティック(恋愛的)」と「セクシュアル(性的)」を
分けて考えることもあります。
セクシュアリティ診断で「パンセクシュアル」と出た私の話
初めてセクシュアリティ診断を受けたとき、
ちょうど「自分ってどういう人間なんだろう」と考え始めていた時期でした。
当時の私は、自分のパートナーが男性なので、
異性愛者だとはなんとなく思っていたし、
同性に対して「恋愛感情を持ったことがある」とはっきり言える経験もありませんでした。
でも診断結果の中に、
「パンセクシュアル」の文字がありました。
最初は正直、「え?そうなの?」という驚きのほうが大きかったです。
「好きになる人の性別は関係ない」という言葉が、妙にしっくりきた
「パンセクシュアル」と聞いても、
正直よくわかりませんでした。
ただ、診断結果と一緒に表示された説明文にあったこの言葉が、
ずっと頭に残っていました。
「好きになる人の性別は関係ない」
そういえば、誰かに惹かれるときって、
その人の性別よりも話し方とか、考え方とか、空気感とか、
そういうものに惹かれていたかもしれない。
それって、
性別じゃなくて“人”に惹かれていたってことなんじゃないか。
そう考えると、「パンセクシュアル」という言葉が
私の背中を押してくれているような気持ちになりました。
経験が少ないと、自分でラベルを決めるのが怖くなる
でも一方で、
「色々な性別の人と付き合ったことがあるわけじゃないから、実際のところはわからないよな…」
という引っかかりもずっとありました。
もし私がパンセクシュアルだとして、
今まで経験したことのない人たちと付き合ってみたら
「確かにそうだった」と思えるかもしれない。
でも、実際にはその証明ができない。
だから、不用意に名乗ってはいけないんじゃないか…。
そんなふうに思って、
結局「わたしはパンセクシュアルです」とは言えないまま、
ずっと曖昧なままでいました。
感覚が先にある。ラベルはあとからついてくるもの
でも今はこう思っています。
たとえ経験が少なくても、
「好きになるときに性別を基準にしていない自分がいる」。
その感覚こそが、
私の中のパンセクシュアルらしさなんじゃないかって。
診断はあくまで“きっかけ”であって、
「自分を知るプロセス」の中で、少しずつ意味が深まっていくもの。
あえて自分にラベルをつけなくても、
誰かに公表しなくても、
「こういう感覚がある自分を、大切にしていいんだ」と思えるようになりました。
パンセクシュアルという言葉がくれた安心感
セクシュアリティというのは、
とても個人的で、繊細で、グラデーションのあるもの。
はっきりした経験がなくても、
「なんとなくそんな気がする」という感覚があれば、
それでいいんじゃないかと思っています。
私にとって「パンセクシュアル」という言葉は、
自分の曖昧さや、はっきりしない部分を
否定せずに受けとめてくれる言葉でした。
あなたが誰かを好きになるときは、何を見ていますか?
性別?
表情?
話し方?
考え方?
声?
空気感?
誰かを「好き」と思うその瞬間。
そこに性別が先にある人もいれば、あとからついてくる人もいる。
どちらも、間違っていないし、どちらも「あなたらしい」んだと思います。
セクシュアリティに名前をつけることは、
自分の輪郭を少しだけ浮かび上がらせてくれるものかもしれません。
この記事が、あなた自身の「好き」の形について、
少しでも考えるきっかけになったら嬉しいです。
あなたは、あなたのままでいい。