アウティングとは|誰かの秘密を「話してしまう」前に知っておきたいこと

アウティングとは、本人の同意なく、他人がその人の性的指向や性自認などの個人情報を第三者に伝えてしまう行為のことです。
たとえ軽い気持ちや冗談でも、それは相手にとって深い心の傷となることがあります。

私はその言葉の意味を、「実際に自分がアウティングされた」という痛みを通して初めて知りました。
ある日、クラスメートから「ユウってレズなんだね」と言われて、頭が真っ白になったのです。
何が起きているのかわからず、ただ混乱と恐怖でいっぱいでした。

後から知ったのは、友人だと思っていた人が、私の知らないところで嘘の噂を広めていたという事実。
その瞬間、「信頼していた人に裏切られる」という出来事が、どれほど人の心を傷つけるのか痛感しました。

この記事では、私自身の体験を通して、アウティングがもたらす心理的な影響や防ぐための考え方を、やさしく丁寧にお伝えします。

同じように「誰かに話すのが怖い」と感じている人の心が、少しでも軽くなればうれしいです。

目次

アウティングとは──「本人の了承なく話すこと」がもたらす深い傷

アウティングとは、本人の同意なしに、他人がその人の性的指向や性自認などの個人情報を公にする行為のことです。

たとえば、「あの人、実は〜なんだよ」と第三者に話すこと。

たとえ悪意がなくても、それは“その人の安全を奪う行為”になり得ます。

心理学的に見ると、アウティングは「アイデンティティの侵害」とされます。
自分の存在をどう伝えるかという権利を、他者の判断で奪われることだからです。

これは単なる噂話ではなく、人の人生に関わるほど深い影響を与える行為なんです。

数字で見るアウティングの影響

アウティングの被害は、決して少数ではありません。
国内の調査によると、性的少数者の約25%が本人の同意なしに性的指向や性自認を明かされた経験があると報告されています[1]。
4人に1人という割合は、アウティングが身近な場所で起きていることを示しています。

アウティングを経験した人の多くは、強い心理的ストレスを抱えています。
海外の研究では、アウティングを受けた人はうつ症状や不安感が増加する傾向があるとされ[2]、その影響は長期に及ぶこともあります。

また、日本国内では職場で自分のセクシュアリティを明かしていない人が7割以上にのぼるという調査もあります[3]。
こうした数字は、性的指向や性自認をめぐる情報が、依然として「話すことにリスクを伴う社会環境」にあることを示しています。

アウティングは、本人の尊厳だけでなく、生活の安全や社会参加にも影響を及ぼします。
それは個人間のトラブルではなく、社会全体が向き合うべき課題です。


参考文献:
[1]日本心理学会「カミングアウトの覚悟と勇気」
[2]Williams Institute, UCLA School of Law (2020). “Minority Stress and Mental Health”
[3]Indeed Rainbow Voice 2023 「LGBTQ+当事者の仕事や職場に関する意識調査」を実施


体験談──親友だと思っていた人からの裏切り

私が初めて「アウティングされた」と知ったのは、セクシュアルマイノリティの友人に言われた一言でした。
「それは、ひどいアウティングだね」と。

当時、私は自分のことをレズビアンだとは思っていませんでした。
もし女性を好きになることがあっても、恋愛や性的な感情とは違う“グレーな気持ち”として捉えていたからです。

でも、親友に告白されて断ったあと、クラスメートから突然「ユウってレズなんだね」と言われました。
何が起きているのかわからず混乱していたら、後日その親友が私のいないところで嘘の情報を広めていたと知りました。
裏切り。怒り。恐怖。何よりも、「自分が自分でなくなるような感覚」がありました。

その後、私は深い人間不信に陥りました。
誰を信じていいかわからず、殻にこもるしかありませんでした。
ミスジェンダリング(自分の性を誤って扱われること)されたような違和感を押しつけられた気持ちもあり、体調を崩して不登校になった期間もありました。

でも、時間をかけて少しずつ回復できたのは、「アウティング」という言葉を教えてくれた友人の存在でした。

アウティングの出来事から10年以上経ってからでしたが、初めてその人に当時のことを打ち明けたとき、「話し合った方がいい」と背中を押してくれました。

私はもう、そのことについて話したくないし、関わりたくないというのが正直な気持ちでした。
でも、結果的に、私を傷つけた友人から謝罪の言葉をもらうことができました。

私の詳しい体験は、Kindleエッセイ『好きって言わないで』にも綴っています。


あの出来事を通して、私は「アウティングは誰にでも起こり得る」ということ、そして「知らないことが誰かを傷つけてしまう」という現実を学びました。


アウティングの心理的影響と回復のプロセス

アウティングは、アイデンティティを他人の手に奪われる経験です。
心理学では、こうした体験がもたらすストレスを「マイノリティ・ストレス」と呼びます。
これは、社会的少数者が日常的に感じる不安や恐怖、孤立感のこと。

「誰にも相談できない」「自分の話を信じてもらえないかもしれない」という思いは、人を深く傷つけ、信頼する力を奪ってしまいます。

しかし、回復のきっかけは“共感”です。
誰かが「それはつらかったね」と受け止めてくれるだけで、心は少しずつ安全な場所を取り戻します。

支える側にできるのは、相手の言葉をジャッジせずに聞くこと
「あなたの話を受け止めるよ」と伝えることが、何よりの支援になります。


アウティングを防ぐためにできること

アウティングを防ぐには、まず“カミングアウトは本人の権利である”と理解することが大切です。

それは本人のタイミングで行うもの。
「自分が知っているから」といって他人に話していい理由にはなりません。

しかし、カミングアウトされる側も、抱えきれない重さを感じることがあります。
そんなときは、個人を特定できない形で相談することも一つの方法です。

秘密を守りながら自分の気持ちを誰かに話すことは、決して悪いことではありません。

一人ひとりが「話していいこと」「話してはいけないこと」を意識することで、アウティングで傷つく人が減るといいなと思います。


まとめ

もし、あなたがいま誰にも言えない秘密を抱えているなら、
「誰にも相談できないよね、そんなこと」とつぶやいていた過去の私のように、
どうか自分を責めないでほしいです。

打ち明けることも、話さないことも、どちらもあなたの選択。
その選択が尊重される社会であってほしい。

そして、自分の個性を打ち明けることで、社会的に不利益が生じてしまうような世の中から、
それぞれの個性が尊重される社会に変わっていくことを願わずにはいられません。

あなたは、あなたのままでいい。


参考資料

厚生労働省「職場と性的指向・性自認をめぐる現状」
日本心理学会「カミングアウトの覚悟と勇気」

ここまで読んでくださって、
ありがとうございます。

「“ちゃんと”生きてるつもりなのに、なぜかずっと苦しい」

「この気持ち、誰にもわかってもらえないかも…とあきらめてきた」

「“普通”を装ってきたけど、本当の自分がどこかに置いてけぼり」

「恋愛や性別のことを考えるたび、なんでこんなにモヤモヤするんだろう」

「みんなと同じようにできない自分が、どこかおかしいのかな?」

 

そんな思いを抱えたあなたへ。

 

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