私はずっと、コスプレをしてみたい気持ちを心の奥にしまっていました。
やりたい。でも、外に出る勇気がない。そんな曖昧な状態のまま、時間だけが過ぎていたんです。
そんな私がこの春、夏目友人帳のコスプレをやってみようと決めました。
その第一歩が、ウィッグをカットしてもらうこと。
今回は、Xジェンダーの私が「ダメ元」でお願いしたウィッグカットが、思いがけず自分を振り返る体験になった日の話を書いてみようと思います。
夏目友人帳について簡単に紹介
主人公の夏目貴志くんは、「妖が見える」という特異な体質を持つため、孤独を抱えていて、
すでに両親が亡くなっている夏目は、親戚の家を転々としていました。
家族の唯一の遺品が、夏目レイコという祖母が残した「友人帳」という手帳でした。
そこには、かつてレイコが勝負で負かした妖たちの名前が書かれていたのです。
夏目が高校生になったとき、夏目を引き取ってくれる心温かい夫婦に出会い、
そこでの人間関係や高校で芽生える友情、
そして、妖と関わっていく日常が描かれていきます。
夏目は妖が見えるということを同級生や家族に隠しながら、
「友人帳」に書かれた妖の名前を妖に返していくのですが…。
夏目が人間を愛して大切にしたいからこそ抱える、「言えない秘密」、
それを気軽に打ち明けられる「妖」の存在。
私にとってはとても共感できる要素の多い作品なのです。
夏目友人帳のコスプレをやろうと決めた理由
夏目友人帳は、私にとって特別な作品です。
夏目友人帳は、
孤独感や誰にも言えない秘密を抱えたまま生きる人にも、
そっと寄り添ってくれる物語だと感じています。
そんな本作のキャラクターだからこそ、
コスプレをしたい気持ちは以前からありましたが、
「コスプレ姿で外に出る」というハードルが高く、なかなか踏み出せませんでした。
そんな中、コミュニティの仲間が
「一緒にやろう」
「夏目友人帳でいいよ」
と言ってくれたんです。
一人では無理だったことが、誰かと一緒ならできるかもしれない。
そう思えたことが、今回の行動につながりました。
池袋で購入したウィッグと、その続きの話
前回、私は池袋でコスプレ用のウィッグを購入しました。
そのときの体験は、こちらの記事に書いています。

ウィッグを買ったことで、コスプレは「憧れ」から「準備段階」に進みました。
でも次に立ちはだかったのが、ウィッグカットです。
専門店に行くべきかな、と思いつつ、
ふと、行きつけのヘアサロンの顔が浮かびました。
「ダメ元」で聞いてみたウィッグカット
そのお店には、コスプレ用のウィッグカット専用のメニューはありません。
それでも私は、思い切って聞いてみました。
「コスプレのためにウィッグを買ったんですけど、カットってできますか?」
完全にダメ元でした。
断られたら、池袋の専門店を探せばいい。
行き慣れたお店で済んだら楽だな、というくらいの気持ちでした。
すると、店主さんは
「いいですよ」
と言ってくれました。
「聞いてみるもんだな」と思いましたね。
実際に仕上がった髪型は、こんな感じでした。


3時間のウィッグカットと、音楽の時間
ウィッグカットは、7000円で約3時間。
おしゃべりしながら、ゆっくり進みました。
そのとき店内で流れていたのが、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のアルバムでした。
私は小学6年生の頃からQUEENが好きで、その音楽が流れてきたことで、自然と気分も上がっていました。
店主さんは、私の母と同世代。
We Are the World世代の好きな歌手の話で盛り上がりました。
話題は自然と、シンディ・ローパーの「True Colors」にも及びました。
私は、中学生の頃にこの曲を聴いて涙が出たことを話しました。
「本当のあなたを見ているよ」
そのメッセージが、当時の私の漠然とした孤独感を、そっと包んでくれた気がしていたからです。
中学生の頃の私は、
なぜ苦しいのか、なぜ孤独なのかを言葉にできませんでした。
ただ、漠然とした不安だけがありました。
今の私は、当時よりも
「自分を表すための言葉」をたくさん持っています。
Xジェンダー、ノンバイナリーという言葉を知り、
仲間と安心して話せる場所に出会ったことで、
考え方や周りへの態度、物事の受け取り方も、かなり柔軟になったと感じています。
夏目くんヘアーを見た瞬間の気づき
カットが終わり、鏡を見たとき、
ウィッグはしっかり夏目くん寄りになっていました。
それだけでなく、
「意外と自分の肌色にも合っている」
と感じたんです。
店主さんに
「このまま出かけても全然いけるね」
と言われ、私も「そうだね」と、驚きつつも言いました。
コスプレ用だけど、日常使いもできそう。
地毛で試そうと思ったら全部脱色する手間があるけど、ウィッグだったらそれもいらない。
ウィッグがあることで、表現のハードルが一気に下がった感覚がありました。
Xジェンダーとして感じた「選べる余白」
Xジェンダーだと気づいたばかりの頃は、
周囲の言葉に傷ついたり、存在を消されたように感じることが多くありました。
今は、マイクロアグレッションや
ノンバイナリーをいないことにするような発言に触れても、
「それでも私はXジェンダーだな」と感じられる日が増えているように思います。
それは、強くなったというより、
仲間がいて、安心して話せる空間を得たからだと思います。
ウィッグカットの体験も、
「理解されること」より
「安心・安全な空間であること」
の大切さを、あらためて感じさせてくれました。
中学生だった自分へ、今の私から
もしできるなら、
コスプレをした姿の私を、中学生の頃の自分に見せたいです。
やりたいと思っていることを実現するのは、恥ずかしいことじゃない。
いつ始めても、遅くない。
そう言ってあげたい。
そのために、メイクも練習しなくちゃですね。
今回のウィッグカットは、
夏目友人帳のコスプレに近づくための一歩であり、
自分の表現を日常に持ち込むための小さな実験でもありました。
その積み重ねで、私は少しずつ前に進んでいます。
あなたは、あなたのままでいい。

