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『人としてつき合えたら』漫画の作品情報
作品名:人としてつき合えたら
ジャンル:ヒューマンドラマ/友情
テーマ:アセクシュアル、アロマンティック、友情、恋愛前提社会
既刊:1〜2巻(※執筆時点)
特徴:説教的にならず、物語として自然に「アセクシュアル・アロマンティック」を描いた作品
あらすじと、私がこの作品に惹かれた理由
『人としてつき合えたら』は、アセクシュアル当事者の月城さんと、いわゆる“普通”とされるシスジェンダー・ヘテロセクシュアルの朝倉くんが出会い、友情を築こうとする物語です。
恋愛やセックスが前提になりやすい社会の中で、「人として一緒にいる」ことは成立するのか。そんな問いを、日常の延長線にある出来事として描いていきます。
私がこの作品に強く惹かれたのは、アセクシュアル・アロマンティックの人たちが登場する漫画を、それまでほとんど読んだことがなかったからです。
だから、自分が感じているアセクシュアルな感覚と、登場人物たちの違いや共通点を知りたいと思いました。
また、私自身がセクシュアルマイノリティの中学生を主人公にした小説を書いていることもあり、当事者のキャラクターが活躍する作品を探していた、という背景もあります。
アセクシュアルについては、こちらの記事でまとめています↓

体験談|「セックスなしでは一緒にいる価値のない人間かな?」という言葉
この作品の中で、特に忘れられない場面があります。
月城さんが、朝倉くんから性的な関係を期待され、それを断ったときに投げかける言葉です。
「セックスなしでは、一緒にいる価値のない人間かな?」
この一言を読んだ瞬間、私は正直に言うと、羨ましいと思いました。
なぜなら月城さんは、その場で自分の立場を言葉にできていたからです。結果がどう転ぶにせよ、「私はここまで伝えた」と自分で思える地点に立っていた。
ここまでの流れは、私自身の過去の体験とも重なります。
友達だと思っていた相手が、いつの間にか私を恋愛や性的な目で見ていて、勝手に関係を進めていた。告白され、応えられないと伝えた途端、逆ギレされたこともありました。
当時の私は、自分がアセクシュアルだという自覚もなく、そもそもそんな性的指向があることすら知りませんでした。
だから「断ってしまった自分が悪いのではないか」「相手を傷つけたのではないか」と自分を責める一方で、相手の一方的な感情を理不尽だとも感じていて、その理由がわからず、ずっとモヤモヤしていました。
もしあのとき、この作品の言葉を知っていたら。
少なくとも、あの違和感を抱え続けなくて済んだのかもしれない。そう思わせてくれる場面でした。
私も今では、アセクシュアルの中にも様々な種類があって、一口にアセクシュアルと言っても性的指向や恋愛指向に様々な特徴があることを知ることができています。
多様なアセクシュアル・アロマンティックの用語についてはこちらの記事でまとめています↓

恋愛指向・性的指向・性欲は別物ということを丁寧に描いていた
この作品で描写が丁寧だと感じた理由の一つに、「恋愛指向・性的指向・性欲は別物である」という説明をちゃんとしてくれているところが挙げられます。
これは簡単に言うと、
・誰を好きになるか(恋愛指向)
・誰に性的に惹かれるか(性的指向)
・そもそも性的欲求がどれくらいあるか(性欲)
これらは必ずしも一致しない、という考え方です。
アセクシュアルとは、「他者に対して性的惹かれを感じにくい、または感じない性的指向」のことです。
だからといって、人を大切に思わないわけでも、関係を築きたくないわけでもありません。
また、他人に性的惹かれは感じなくても、性的な欲求を感じる人もいるのです。
『人としてつき合えたら』は、この前提を無理に説明するのではなく、登場人物同士のズレやすれ違いとして描くことで、気づきを与えてくれます。
そのため、当事者でない人にも「そういう人がいるんだ」と自然に届く構造になっていると感じました。
「恋愛前提社会」で線引きをする難しさ
私がこの作品を読んで強く感じたのは、「セックスを望んでいません」「恋愛を前提にした関係は持てません」と主張すること自体が、とても難しい社会に私たちは生きている、ということです。
恋愛が前提で、告白されたら答えるのが礼儀で、関係が進まないのは失礼。
そんな空気の中では、「友達として一緒にいたい」という気持ちは、とても軽く扱われがちです。
だからこそ、もし同じ状況にもう一度なったら、私はこう言っていたかもしれません。
「付き合えなかったら、友達として価値のない存在なのかな?」と。
この線引きを言葉にできるかどうかは、自分を守るためにとても重要だと、今は思います。
あのころに、自分のアイデンティティに気づけていたら、恋愛するのが当たり前の世の中でももっとうまく生きていけたのかな…?そんなことを考えます。
教育的価値|学生や教育現場にも勧めたい理由
この作品は、アセクシュアル当事者に限らず、
・恋愛が前提だと感じて苦しい人
・誰かを好きになった側の人
・恋愛や性愛にコンプレックスを抱えている学生
こうした人たちにも届く内容だと思います。
特に、性的指向・恋愛指向・性欲の違いを、物語の中で自然に学べる点は、教育的な場面でも役立つ可能性があると感じました。
「正解」を押し付けるのではなく、「違いがある」という事実を提示してくれる。その姿勢が、この作品の大きな魅力です。
創作をする立場として感じたこと
私自身、ノンバイナリーの中学生を主人公にした小説を書いています。
『人としてつき合えたら』を読んで改めて感じたのは、当事者の物語は、ストーリーとして描けば、当事者でない人にもきちんと届くということでした。
普通の人とアセクシュアルの人が交わるからこそ生まれる物語がある。
この作品は、セクシュアルマイノリティの登場人物がいても、どこか遠い世界のファンタジーにしない、身近な友人の話として読める作品になっていると感じました。
私が連載している小説はnoteで無料で読めます。いつか、ペーパーバックで販売することを夢見て、頑張って執筆中です。
セクシュアルマイノリティ当事者の中学生たちが織りなす物語
Xジェンダー「恋(レン)の恋愛相談室」はこちらから読めます↓
まとめ|アセクシュアル当事者として、応援したい作品
『人としてつき合えたら』1巻・2巻まで読んで、私は素直に「とても面白かった」と思いました。
同時に、アセクシュアル当事者として、これからも応援したい作品だとも感じています。
この漫画は、理解を強要しません。
ただ、「人として一緒にいる」という選択肢があることを、物語として差し出してくれます。
私はこの作品に出会えてよかった。
そして、過去の自分に「あなたは何も悪くなかった」と、少しだけ言ってあげられた気がしています。
あなたは、あなたのままでいい。

